ベルの血脈・カネボウ繊維素材の今(10)

2006年07月07日 (金曜日)

本当の勝負はこれから

 「勝負はこれから」。カネボウの繊維素材事業を引き継いだ企業の多くが感じていることだろう。KBセーレン、三甲テキスタイル、KBスピニング、帝人ファイバーの不織布製品事業は初年度、好業績を上げた。一見、順調なスタートのように見えるが、すべてが実力によるものではないのも事実だ。各社が積極的な設備投資を行い、事業構造転換に取り組んでいるのはそのためでもある。

 セーレン子会社のKBセーレンは06年3月期、売上高225億円、営業利益4億5000万円、経常利益11億3000万円の好業績を上げた。

 三甲テキスタイルは05年8月期(10カ月の変則決算)で売上高38億円、営業利益7億4000万円、帝人ファイバーの不織布製品事業も売上高12億円、営業利益1億円と、カネボウ時代、大幅な赤字を強いられた繊維素材事業がいきなり黒字を計上した。

 大幅黒字の要因の一つはカネボウから引き継いだ在庫にある。在庫は評価下げされたのちに、継承会社が引き継いでいるからだ。それを通常価格で売れば当然、利益が出る。すべてではないにしろ、継承会社が大幅な黒字を計上することができたのはこのためでもある。

 三甲テキスタイルの渡辺武道社長は「営業利益の実力は半分くらい」と本音を明かす。そして、営業利益率5~7%で「良しとすべき」と事業の見通しについて慎重な姿勢を崩さない。

 同時に、不良在庫があったのも事実だ。帝人ファイバーの籔谷典弘短繊維事業部長も在庫が一部、利益貢献したことを認める一方で、「処分せざるを得ないものも多くあった」と話すように、特許等のみを引き継いだ東レを除けば、継承企業にとって、在庫は善しあし両面があった。

 こうした在庫問題も含めると、カネボウの繊維素材事業を引き継いだ企業にとって、本当の勝負はこれからになる。在庫による販売のみでスタートしたKBスピニングはその最たるもの。中国での新工場稼働後の業績が本来の実力になる。

 セーレンが積極投資でKBセーレンの長浜工場の構造改善を進め、三甲は三甲テキスタイル本社工場の設備更新等に本腰を入れるなど、各社ともカネボウ時代に実施できなかった設備投資を行う。旧カネボウ社員からも「カネボウに比べて前向き」との声が上がるが、こうした設備投資はある面、危機感の表れでもある。単に事業継承するだけで利益を出せるほど、繊維素材を取り巻く環境は甘くない。

 「ベルの血脈」は確かに受け継がれた。しかし、本当の実力を問われるのは、むしろこれから。継承企業がいかに、カネボウの繊維素材事業を変えていくのか。今はまだスタート地点に過ぎない。