染色加工特集/浜松・蒲郡産地/原油高騰との闘い

2006年07月07日 (金曜日)

生き残りへの踏み絵に

 2005年3月からの「第3次オイルショック」が続いている。日本の染色加工に関係の深いドバイ原油価格は1バレル65ドル前後で高止まりしている。第2次オイルショック時の最高値は1980年の35ドル前後であった。現在の価格は実に1バレル30ドル上回っていることになる。熱エネルギーを原油に求める製造業のコストプッシュは著しい。日本の物流を担うトラック運送業者もピンチだ。染色加工も同じだ。発注者(荷主を含む)が強く、油の値上がりによるコストプッシュが転嫁できない。今次のオイルショックは「生き残れるかどうかの踏み絵」だと訴える加工場もある。過去2回のオイルショックを切り抜けてきた染色業界。現在とは、繊維の周囲の環境が大幅に違う。つまり、中国がウール、コットン、合繊の大半を席けんしており、量の回復が難しいなかで、どうすればこの難局を打破できるのか。浜松(遠州)、蒲郡(三河)両産地の中堅加工場の今日、明日について探る。

エネルギー源の転換図る/下期が中堅加工場の正念場

 重油以外の代替熱エネルギーの発掘を各社が模索している。

 例えば、日本形染の場合、木材チップ、重油、天然ガスの3つの組み合わせでエネルギーを得ている。同社は昨年夏、都市ガス(天然ガス)を導入し、3つのエネルギーの組み合わせに成功した。都市ガスを採用するにはパイプラインの設置に相当額の投資が必要だ。ドバイ原油の高原相場のなか、この投資は誤りでなかった。

 東海染工浜松事業所は、バイオマスボイラーの導入を昨年決め、今年早々、工事に着手した。5月には各監督官庁の検査も終わり、同月31日に「火入れ式」を行い、6月からテスト運転を開始した。

 八代芳明社長は「1バレル45ドルのドバイ原油価格を想定してバイオマスボイラーの導入を決めた。現在、65ドル前後ということは、直接投資金額の回収は予想以上に早い」と語っている。

 バイオマスボイラーの設置には、10億円近い巨額の投資が必要だ。代替エネルギーを得るための投資としては、半端な金額ではない。中小企業の染色加工場では資金調達が難しい。

 大和染工は、微粉炭と重油の併用である。この微粉炭も値上がりしており、安い微粉炭を探し求めているという。

 鈴六染工は以前、熱エネルギー源の代替に廃タイヤを充てるよう設備投資したことがある。この設備は今では存続していない。廃タイヤの安定供給に問題があったと見られている。

 代替エネルギーを求めるのではなく、省エネルギー、熱効率の向上、加えて「水」をどううまく活用するかも、別のアプローチになる。

 その一つとして、乾燥時の省エネルギーが挙げられる。これは、過乾燥対策をどう推進するのかということになる。

 精練―漂白―連続染色という一連の工程で、どれだけ水を少なく使うかということによっても、熱エネルギーをかなり減らすことが可能である。

 ある中堅加工場は、「今年の上期(1~6月)までの業績は、加工量、加工賃、売り上げとも前年同期比で横ばいないし、微増である。経費の削減を努めてきたが、今年に入っての月ごとの重油の値上がりで、この分だけ赤字になった」と訴えている。

 原油価格が45~50ドル前後なら、なんとか発注者負担と自助努力によって、収支のバランスをとることができる。しかし、65ドルとなると、重油で1キロリットル5万~5万1000円となり、とても通常の取引状況の中で解決できる数値ではないということは歴然としている。

 ちなみに05年1月時点では、重油価格は約3万円であった。

 染色加工場のコストに占める燃料費(エネルギー費)の比率は、昨年上期時点では7~8%であった。最近では13~14%と倍近く上がっている。このまま推移すると、中堅加工場では、前年より一億円以上の油代の支払い増になる加工場が続々と出てくることになる。下期は、染色加工場にとってまさに「正念場」になりそうだ。

染色加工に個性を発揮/東三河染色協組の加盟企業

 東三河染色協組(阪下治理事長)の加盟企業は、7社で、うち糸染め3社、布帛染色4社である。

 トップ企業、鈴寅の鈴木隆啓社長は「まず、下請け意識の脱皮が大切。次に用途開発、販路開拓、新技術の確立などで難局を切り開きたい。国内マーケットはシュリンクしているが、世界市場を見れば、弱気になることはない」と語る。同社のナノ金属コーティング加工(スパッタリング加工)は、染色加工の新しい事業開拓の一つだ。

 三ツ輸晒染は今年4月、発注者に営業停止案内をしたが、発注者の要請で5月連休明けから受注を再開した。2つの工場を1つに集約すると同時に、不退転の決意で発注者に加工賃修正を求め、ある程度容認されたことにより、業績は回復基調と伝えられる。

 艶栄工業は、「ニドム加工」(酵素加工)という独自の技術を綿100%織物まで拡大し、新しい分野への挑戦を見せている。

 三河(蒲郡)の糸染め各社もそれぞれ個性があってユニークな企業が多い。

豊島・浜松支店・戸松憲司支店長/染色はテキスタイル事業の命綱

 産地がシュリンクするのと並行して、国内テキスタイルも年々減少の過程にある。こうしたなか、産地も当然のことながら、「量」を求めるのではなく「質」あるいは、付加価値の追求に活路を見いだそうと努力している。

 浜松は加工産地として自他ともに認める一大産地を形成してきたが、この分野でも昨年秋、名門今枝染工が事業統合によって東海染工浜松事業所に移管された。現在、静岡県織物染色協同組合に加盟する企業は5社となった。発注者の一人として、これ以上、加工場の企業数が減ることは、産地にとってもマイナスであると考える。原油の値上がりで、染色は厳しい局面であるが、発注者としてはあまりに値下げし過ぎた品種については、上方修正もやむなしと考えている。

 当支店のテキスタイルビジネスは、ユニフォーム素材の供給と、衣料用テキスタイルの2つが主な柱だ。

 ユニフォーム・テキスタイルビジネスは、おおむね横ばいに推移している。問題は、カジュアルやフォーマルなどの外衣向けテキスタイルが苦戦していることだ。

 新しいマーケット作りのためには、生機から染色加工仕上げ品、さらには製品提案というスタイルに移行させていくのがベストだが、リスクが大きい。まずは、社内ネットワークの活用で、東京なら当社の六部とのコラボ、名古屋なら五部、十四部、十部などとリンケージした取り組みを強める。また、SPA(製造小売業)、アパレル、生地問屋などを含め、点から線へ、線から面への組み立てを考えている。

 生地、加工品、縫製など人員と商い額のバランスがとれていないと「勘定合って銭足らず」ということになる。そうならないよう、より慎重に次のステップ作りをしていく。

 今年2~3月ごろは麻複合素材が好調であった。4~5月は秋冬ということで、コーデュロイが売れた。ただ、ヒット商品として、量が流れるものは極端に減っている。

 各加工場へのお願いとして、納期は30日ぐらいで、受注者が請け負った納期は必ず守っていただきたい。

 染色は産地だけでなく、テキスタイルを扱う業者にとっては、いわば命綱でもある。染色加工に携わる各位にさらなる努力をお願いしたいところである。