綿紡績・縮小進む国内設備/近藤紡、浜松工場閉鎖へ

2006年09月27日 (水曜日)

 採算悪化や需要減少などを背景に国内紡績設備の再編が加速している。先週に発表された日本紡績協会会員会社の運転可能錘数は8月末時点で109万9000錘と前年同期比で11万8000錘、9・7%減少した。10月末には近藤紡績所が浜松工場の操業を停止し、11月には日清紡の国内設備再編が終了する予定で、100万錘割れが目前に迫ってきた。

 近藤紡績所は10月末で浜松工場の第1工場を閉鎖する。紡績設備は4万錘で、30、40番手のカード糸を生産していた。すでに第2工場、第3工場は閉鎖しているため、浜松工場には紡績設備がなくなることになる。第1工場で生産していた品種は桜井工場、大町工場にシフト。また、跡地約40万平方メートルは賃貸などで有効利用する考えで、再開発する。

 同社は一昨年から昨年にかけて浜松の第2工場(4万錘)、第3工場(6万錘)、豊橋工場(6万錘)を閉鎖。2年前に36万錘あった国内設備は、浜松第1工場の閉鎖によって14万5000錘と半分以下。

 残る大町工場、堀金工場、桜井工場はすべて自動ライン化が進んだ合理化工場。利益が出る体制にあり、「今のところこれ以上減らす考えはない」(近藤隆常務)と言う。現在、全設備の3分の2は24時間フル操業で、その他も順調に稼働している。

 綿紡績業界全体で国内紡績設備の再編をこの1年で見れば、日清紡が昨年12月に国内紡績設備を11万4400錘削減して、13万1700錘体制とすることを発表。これに伴い、国内生産は高付加価値品・差別化品に特化した。汎用品は海外生産品に置き換えるが、それでも採算の合わない分野からは撤退し、中番コーマ糸の大幅な縮小などを視野に入れてきた。

 フジボウファイバーは大分のコアスパンヤーン設備を約3分の1の7000錘に縮小した。昨年秋に持ち株会社制への移行に従って分社化した時は7万2000錘あった紡績設備を6万錘強とした。大きな市況回復は望みにくいとの判断があり、国内生産品は特殊品に特化するとともに、定番的な商品は中国協力工場を使う形にした。このほか、6月にはシキボウが1万2000錘を保有していたシキボウ高知を解散。この資産は都築紡績が引き継ぎ、ツヅキボウ日高として稼働しているが、これは国内工場を増やした数少ない例だ。

 国内設備再編が加速している背景には、綿糸の採算悪化があるとみられる。昨年は市販糸の市場縮小が急激に進み、ある紡績からは「前半は予想以上に需要が減少。10月からは端境期に比べて改善したが、採算は合わない」という声が聞かれた。収益改善に向け高付加価値化、小ロット・多品種化が志向され、定番的な採算の合わない分野の縮小が進む。設備もそれに合わせた形になる。

 定番糸の国内生産が減った分は海外品への置き換えが図られるが、綿糸輸入が昨年後半から激減しているようにこちらも転換期を迎えている。背景には既存事業の見直しを進める商社が在庫を圧縮していることもあり、市況が変わればすぐに回復するというものでもない。機屋やニッターは海外と差別化するうえで、細かく素早い対応が志向され、それには糸が適時に必要。今後、糸手配が難しくなる可能性があり、適品不足を懸念する声も聞かれる。