我が社の繊維事業戦略/シキボウ常務繊維部門長・池永雅幸氏

2006年11月09日 (木曜日)

新商流築き減収に歯止め

 今上期の繊維事業は減収基調に歯止めがかかり、増収増益を確保したようだ。新たな商流の構築や生産拠点の再編などが奏功した。今後に向けては製品展開の拡大、織物のカジュアル化推進などのほか、メルテックスの立て直しなどに注力する考え。メルテックスは、重点分野を絞る形で再構築を図る。

上期、増収増益見通し

 ――今上期の繊維事業を振り返ってください。

 単体では、前期比で増収増益となる見通しです。これまで減収基調が続いていましたが、ここで歯止めがかかったことは大きいですね。

 ――増収増益の要因をどのように分析されますか。

 従来型のテキスタイル販売は減収に歯止めがかかったとは言えませんが、新しい商流が出てきています。やはり従来型の商売は市場全体が減少傾向にありますので、その部分を必死に食い止めるというよりも新たな流れを作っていくことを重視しています。その一つが製品展開の拡大です。ニットもテキスタイルは減少していますが、製品化が進みました。寝装についても製品展開を増やすことで、全体としては微減収にとどめています。

 利益面では、工場操業率の向上が寄与しています。例えばシキボウ高知を解散したこともあって、富山工場の操業率が上がりました。シキボウ江南では、糸染めを外注化するなど一部設備を縮小したことでロスが減り、固定費も圧縮できました。

 ――織物での重点方針であるカジュアル化の進展状況はいかがですか。

 期を経るごとにカジュアル比率は上がっています。前期は10%程度でしたが、今上期は26%前後に高まりました。今期からスタートした中期3カ年計画中に50%以上とする計画です。これはシキボウ江南の染色加工料金の単価アップにもつながります。

省エネ視点に設備投資

 ――原燃料価格高などコスト上昇要因が多いですね。

 とくに染色加工工程を持つシキボウ江南とインドネシアのマーメイドテキスタイルインダストリーインドネシア(メルテックス)は燃料価格高騰の影響が大きいですね。両社とも今年中に設備投資を行い、燃料高に対応できる体制にします。

 ――どういった投資になりますか。

 省エネを狙った投資です。シキボウ江南では廃熱回収を中心にした設備投資を今上期中に完了させました。今下期に効果が出ることを期待しています。メルテックスは燃料については、ガスで対応しようとしていたのですが、インフラの関係で供給が不安定という問題があります。今は順調に供給されていますが、将来は不透明な部分もありますので、石炭を使う形に変えようとしています。年内には完了させる予定です。

 ――今下期の重点課題はどのようなものですか。

 戦略素材について具体的に成果を獲得していくことや、既存分野での領域拡大および深耕で、繊維事業の黒字定着を図ることです。また、メルテックスの業績をどう改善していくかですね。今は他で稼いだ利益をメルテックスの赤字で相殺されてしまっている状況です。08年12月期の黒字化に向けて、投資効果を見定めながら手を打っていきます。

 ――先に開いた展示会は戦略素材である「ロイヤルサーラ」「デュアルアクション」に絞り込んだ内容でした。

 今秋の展示会から、これまでのように幅広く何でも提案していくのではなく、戦略素材を絞り込んだ内容にしました。来場された方々からの評判も良かったので、あとはそれを具体的な受注につなげていくことですね。

メルテックスは紡績に重点

 ――メルテックスの方向づけはいかがですか。

 重点分野を作る必要があり、そういった視点で再構築を進めます。売上高を増やすというよりは、利益の取れる事業に特化していき、採算の合わない分野を縮小させていく形になります。また、日本との連携を強めます。現在は糸や生機を日本に持ち込んでおり、メルテックスの生産の約半分が日本との連携になりますが、今後はより増えていくでしょう。

 ――重点分野とは具体的にどの分野ですか。

 糸を中心に組み立て直しつつあります。この工場の品質はどこにでも通用するものですから。さらなる糸質の改良に向けた設備投資も行う計画です。

 ――今後、製品展開を拡大していくうえで縫製拠点の確保は、どういう形で進められますか。

 製品展開の拡大は、採算をしっかりと見極めながら進めていきます。解散したインドネシア子会社の縫製は中国に移管し、上海敷紡服飾でミシンを100台増設して350台体制にする計画です。その後については協力工場を増やす形を考えています。

 ――製品展開拡大に向けて重視される点は何でしょう。

 最も重要なことは品質管理、納期管理など基本的なことをしっかりとやっていくことだと考えています。また、自社素材とのリンクなどによって、こだわりのあるシキボウらしいモノ作りを基本にしていきます。製品展開は年間40億円を目指していますが、これはほぼ達成しつつあります。カットソーのほか、スポーツ衣料などがとくに伸びていますね。

 ――中国には寝装のプリント工場もあります。

 寝装の商流が大きく変わりつつあるなかで、強みになっていますね。今後、さらに磨きをかけていくことが重要です。今はスクリーンプリント1台で月産25万メートルですが、常に受注残を抱える状況です。早期にもう1台増やしたいと考えています。

 ――上海に設立した貿易公司の構想を聞かせてください。

 どういう風に組み立てていくのか検討を重ねているところです。まずは日系企業にということになりますが、生地や製品の中国内販の拡大を狙っていきます。

(いけなが・まさゆき)

1972年神戸大学経営学部卒、同年敷島紡績(現シキボウ)入社。99年経営企画室長、2002年経営企画室長兼総務部長、04年取締役、05年同経営企画室長兼総務部長兼不動産部門担当、06年常務繊維部門長兼生活資材部門長。