アレルゲン抑制繊維/ユーザーの評価 高まる

2007年01月19日 (金曜日)

 花粉症やアレルギー、アトピー性皮膚炎に悩む人が、増加の一途をたどる現代、人々の清潔で快適な生活環境をサポートする繊維製品への期待が高まっている。最近では、素材メーカーだけでなく、薬剤メーカー、染工場、商社、製品メーカーと、業種の枠を越えて開発を進めるケースが目立つなど“メードイン・ジャパン”のモノ作りの典型としても注目が集まるのがアレルゲン抑制機能繊維製品だ。

薬剤・素材・製品三位一体で開発

 「アトピーやアレルギーの患者さんにとって、最も重要なのはアレルゲン発生を抑えた清潔な生活環境。その意味で、肌着や寝装など繊維製品が占めるウエートは大きい」と話すのは、アトピーやアレルギー患者とその家族、医師で構成する日本アトピー協会の後藤田育宏代表。同協会では、会員のモニタリングを経て適正と判断した商品に「推薦品マーク」を発行するなど、ユーザーに向けた情報発信を積極的に行っている。そんなアレルゲン抑制繊維として注目を集めるのが、積水化学工業が開発した高機能フェノール系ポリマー剤「アレルバスター」を活用した素材だ。

 アレルバスターは、約5年前に米国で開発されたタンニン酸を使った防ダニ剤をヒントに開発された。まず松下電器産業の空気清浄機のフィルターで採用され、「次の用途としてインテリアや寝装への活用を目指した」(積水化学工業高機能プラスチックスカンパニー開発研究所の河村研一ケアマテリアルプロジェクト部長)。

 これを実現したのが小松精練。2003年にカーテンでアレルバスター加工を商品化し、05年から、東レ合繊クラスターのナノテク素材分科会と共同開発を進め、今期はカーテンとふとん側地で100万メートルを超える販売量を達成する見込みだ。このほか、スミノエもアレルバスターブランドでカーペットを展開する。

 また、東レはアレルバスターを活用したカーテンと中わた素材「アレルクラッシュ」を昨年商品化。こちらは同社独自の「ナノスケール加工」など「加工技術でひとひねりした」(繊維加工技術部の桑原厚司商品開拓室長)ことで、トウへの加工を可能にするなど一段と高機能化を進めた。

 一方、薬剤に頼らず物理的にアレルゲンの飛散を抑えるのは、NI帝人商事が販売するマイクロファイバー高密度織物使いふとんカバー「ミクロガード」だ。こちらも1991年の発売以来、60万セッ トを販売し、最近ではイトーヨーカドーや東急ハンズなど流通との取り組み強化で消費者から指名買いの対象となるなど、ロングセラー商品である。

 また、ミクロガードの生地とアレルバスター加工を融合させたのが、西川産業の衛生寝具シリーズ「スーパーセーフティガード+アレルバスター」だ。

 これら商品に共通するのは、薬剤メーカー、素材メーカーと染色加工場、そして商社や製品メーカーによる薬剤・素材・製品という三位一体の共同開発であり、いずれも純国産製品という点だ。

 消費者からもこの点での評価は高く、日本アトピー協会でも「外国製品は、製造や輸送時の衛生環境に不安があるので、完全なメードイン・ジャパン製品にしか推薦品マークは発行しない」(寺岡利光事務局長)方針だ。

 海外品の攻勢が続く日本の繊維産業にとって、日本独自のモノ作り追求が、復活への必須条件だが、業種を越えた取り組みが進むアレルゲン抑制繊維商品の開発には、“ジャパン・クオリティー”構築へのヒントを示唆しているとも言える。

日本アトピー協会とは/約40点に推薦品マーク

日本アトピー協会は、1995年の阪神・淡路大震災の際、被災地でアレルギーを持つ乳児用ミルクが手に入らなくなったことから、そのミルクを被災地に運ぶ活動を行ったボランティア団体を前身とする。その後「アトピーの子供を持つお母さんの会(関西アトピーネットワーク)」と合同して、同年4月に日本アトピー協会として発足した。

 現在、皮膚科・小児科の医師約50人、アトピーやアレルギーの患者とその家族約600人が会員となり、賛助会員として企業約70社が参加する。これまでは任意団体だったが、昨年12月に、NPO法人として大阪府より認可を受けた(登記は、今年2月1日付の予定)。

 同協会が、推薦品マークの発行を始めたのは2000年。当時、機能の不明確な製品をアトピーに有効と称して販売する「アトピービジネス」が横行していたことから、協会では患者と医師の評価に基づく適正な商品を示すマークとして創設した。現在、約40点が推薦品マークを取得し、うち約30点が繊維製品である。協会では「繊維メーカーが、いろいろ良い商品を開発してくれるのは、患者にとって本当にありがたい」(後藤田育宏代表)と話す。

 このほか同協会では、日本アレルギー学会や日本皮膚科学会などでの発表など情報発信を積極的に行っている。