ごえんぼう

2023年11月27日 (月曜日)

 偉大な発明家がいつも報われるわけではない。今から290年前、織機の飛び杼(ひ)を発明し、産業革命をもたらした英国のジョン・ケイもその一人▼飛び杼によって革新的に織物の生産性は飛躍する。しかし、飛び杼で生計が成り立たなくなると心配した手織り職人たちが普及を妨害する。それでも次第に普及するが、今度は織物業者による特許料の不払いという問題が生じ、ケイは訴訟を幾つも起こす▼特許料の支払いを拒む業者は「シャトルクラブ」というシンジケートを結成し、裁判に敗訴した場合の保険を作って抵抗する。結局、ケイは勝訴しても高額な裁判費用で破産状態となる▼晩年、フランスに移住したが、不遇が続いた。ただ、出身地のランカシャー地方のベリーではケイにちなんだパブや記念碑が作られ、英雄視されているという。偉大な発明家としての功績が、今でも地元で語り継がれていることは救いだ。