事業拡大の ステージへ 素材メーカー系商社の現在地(4)東洋紡せんい
2024年03月12日 (火曜日)
KPIは資産効率と利益
東洋紡の衣料繊維事業を担う東洋紡せんいは2022年発足以来、収益改善に向けた事業構造改革を断行してきた。その成果もあり、23年度(24年3月期)は営業黒字に浮上する見通しとなった。引き続き資産効率と営業利益を重視した事業運営に取り組み、要素技術の開発にも力を入れることで東洋紡グループでの衣料繊維事業の存在感を高めることを目指す。
23年度は、スポーツ事業の一部製品OEMやユニフォーム事業のワークウエア向け定番織物など低採算品を縮小し、価格改定の実施や工場再編に着手したことで収益性が改善。営業黒字に浮上する見通しとなった。清水栄一社長は「改革の成果が出ている。黒字浮上で24年度は東洋紡せんいとして“真のスタートライン”に立つことになる」と話す。
24年度も引き続き利益重視の姿勢で臨む。「KPI(重要業績評価指標)は売上高ではなく、資産効率とその結果である営業利益」と強調。スポーツ事業は自社の強みを精査し、ターゲットを明確にした提案に取り組む。縫製子会社のトーヨーニット(三重県四日市市)の統合も検討しており、より筋肉質な事業体制を目指す。ユニフォーム事業はワークウエア向けで合繊ニット生地の提案と白衣・サービスユニフォーム用途に力を入れる。
一方、スクール事業は23年度も堅調だった。スクールは学生服地のニット化の流れを追い風にできたほか、学校体育服で新規案件も獲得している。ただ、納期遅れを避けるために学生服アパレルが生地の発注を前倒ししており、この反動が24年度に生じる可能性がある。
同じく堅調だった輸出織物は中東民族衣装向けの好調が継続しているが、欧米のスポーツ・アウトドア向けナイロン高密度織物はアパレルの在庫調整によって市況に勢いがない。このため、原材料が混合される際にその比率を最終製品に割り当てる「マスバランス方式」ケミカルリサイクルナイロンや、プレコンシューマー型マテリアルリサイクルナイロンなど豊富な環境配慮素材ラインアップで需要の掘り起こしを進める。
23年度から自社生産するメディカル製品や生活資材が東洋紡STCから東洋紡せんいのマテリアル事業に移管されたことを生かし、非衣料分野の開拓にも取り組む。
清水社長は「当社の強みは要素技術の開発。強みを精査し、衣料だけでなく非衣料分野にも展開していきたい」と話す。